100分de名著『全体主義の起源』は見なきゃ損だと思う
今月のEテレの『100分de名著』はハンナ・アーレントの『全体主義の起源』です。
学生時代にレジュメを担当し、わからない固有名詞だらけでボロボロになった痛い記憶がある本ですが、残念ながらそれでもしっかり理解したとは言えず、あとで解説本を読んでなるほどと理解した気になった本でした。
だから100分なんかで説明できるんかいと思いましたが、今の所、エンターティメント性もある文句なしの傑作になっています。
特に前回は、
- 大衆社会と市民社会の違い
- 都市化、根無し草になりアトム化、不景気による失業で不安を抱える大衆
- その大衆の欲望に答える形でナチスがフィクションの世界観を提供
- 世界観政党は秘密結社のような構造。世界観の奥義はヒエラルキーが進まないと教えてもらえない。
- 大衆がいかにその世界観を拠り所とし麻薬のように次の物語を欲しこの世界観政党の物語に動員されていったのか
ということをたった25分で説明していました。
また、伊集院光さんや島津有理子さんの質問、コメントも視聴者目線でわかりやすく、それに答える金沢大学教授の仲正昌樹先生も未読の視聴者にもついていけるような喩えを用いて易しく語っています。
他にも朗読の田中美里が素晴らしい。こんなに美文だったっけと思わず錯覚してしまうほど。田中美里が読むとわかりやすい日本語に聞こえます。
映像やイラストも飽きのこない構成。
明日の最終回は『全体主義の起源』というタイトルなのに、その12年後に著された『エルサレムのアイヒマン』。有名なので本を読んでいなくてもご存知の人はいるはずで、実際私もその口です。
心理学の「ミルグラム実験」の説明でも出てくるあのアイヒマンです。平凡で善良な人でも誰でもアイヒマンになれてしまうという。
さて、悪とは何か。
必見です。